超長時間作用型の抗不安薬にメイラックス錠(一般名:ロフラゼプ酸エチル)があります。
「どのようなメカニズムで効果があるの?」
「ジェネリック医薬品との違いは?」
「お酒は飲んでいい?」
「妊娠中だけど本当に大丈夫?」
薬局で患者さんから聞かれる内容をまとめました。
作用機序(メカニズム)
メイラックスの有効成分であるロフラゼプ酸エチルはベンゾジアゼピン系(BZ系)と呼ばれる薬です。
ベンゾジアゼピン系薬剤は脳内のGABA(ギャバ)の機能を賦活化させることで効果を発揮します。
GABAとは、ガンマアミノ酪酸といわれ、脳内の抑制系神経伝達物質と呼ばれます。
ロフラゼプ酸エチルが脳内にあるベンゾジアゼピン受容体に結合すると、GABAがGABA受容体に結合しやすくなり、細胞外にあるClイオンが細胞内に入り込み、興奮が伝わりづらくなります。
メイラックスには
- 抗不安作用(中等度)
- 抗けいれん作用
- 催眠作用
- 筋弛緩作用(弱い)
の働きがあります。
効能・効果
メイラックスの効能・効果は下記の通りです。
神経症における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
心身症(胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における不安・緊張・ 抑うつ・睡眠障害
ジェネリック医薬品との違い
メイラックスには薬価の安いジェネリック医薬品が販売されています。
- ロフラゼプ酸エチル錠「SN」
- ロフラゼプ酸エチル錠「サワイ」
- ロフラゼプ酸エチル錠「トーワ」
- ジメトックス錠
先発品と添加物に違いはありますが、効能・効果や有効成分は全く同じとなっています。
先発品からジェネリック医薬品に切り替えて「効かなくなった」と訴える方も時々いらっしゃいますが、心理的な要因(プラセボ効果)も影響していることが考えられます。
効果発現時間・持続時間(Tmax・T1/2)
薬を飲み始めてから血中濃度が最大になるまでの時間をTmax(ティーマックス)、その後血中濃度が半分ずつに分解されていく時間をT1/2(ティーハーフ)または半減期といいます。
メイラックス錠2mgを健康な成人が1回服用した時のTmaxとT1/2は下記の通りです。
Tmax | T1/2 |
---|---|
0.8hr | 122hr |
メイラックスは服用して約50分で血中濃度がピークになり、その後5日間かけてゆっくりと薬の濃度が半分ずつに分解されていきます。
持続時間は非常に長く60時間〜200時間続くのが特長です。
ソラナックス(アルプラゾラム)との違い・併用
ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)が頓服などで併用されるケースがあります。
「即効性」「持続性」「強さ」の視点からメイラックスとソラナックスを比較したいと思います。
即効性
メイラックス>ソラナックス
Tmaxはメイラックスが0.8hr、ソラナックスが2.1hr
持続性
メイラックス>ソラナックス
T1/2はメイラックスが122hr、ソラナックスが14hr
強さ
メイラックス=ソラナックス
もしくはややメイラックスの方が強い
ソラナックスの方が短く作用するため、ピンポイントで緊張や不安を抑えたい場合などに使われます。
酒(アルコール)との併用
メイラックスとアルコールは「併用注意」となっています。
絶対に併用できない「禁忌(きんき)」ではありませんが、メイラックスを服用中に飲酒をすることで、ふらつきや注意力低下などの副作用が強く現れてしまいます。
「間隔をあければお酒飲んで大丈夫?」
と質問を受けることがありますが、メイラックスは超長時間作用型に位置付けられ1日以上血液中に薬が残った状態になっていますので、極力飲酒は控えるようにしましょう。
妊娠・授乳中の服用
妊娠3ヶ月以内と妊娠後期には「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」となっています。
妊婦(3箇月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること〔妊娠中に他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)の投与を受けた患者の中に、奇形を有する児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告がある。〕
妊娠後期の婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に哺乳困難、嘔吐、活動低下、筋緊張低下、過緊張、嗜眠、傾眠、呼吸抑制・無呼吸、チアノーゼ、易刺激性、神経過敏、振戦、低体温、頻脈等を起こすことが報告されている。なお、これらの症状は、離脱症状あるいは新生児仮死として報告される場合もある。またベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に黄疸の増強を起こすことが報告されている。〕
引用元 メイラックスインタビューフォーム
つまり妊娠して3ヶ月以内と8ヶ月以降については、
「極力使用しない方がいいが、ベネフィットがリスクを上回る場合に限る」
とされています。
妊娠の希望がある場合は早めに主治医に相談し、減薬や漢方薬への切り替えなど早めに対応をしてもらうことをオススメします。
授乳中の場合「授乳を中止すること」となっています。
授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること。 〔ヒト母乳中へ移行し、新生児に嗜眠、体重減少等を起こすことがあり、また、黄疸を増強する可能性がある。〕
引用元 メイラックスインタビューフォーム