神経痛や筋肉痛などで処方されるビタミン剤が武田薬品から販売されているアリナミンF錠(一般名:フルスルチアミン)です。
アリナミンF錠について特徴や薬局で患者さんから聞かれることをまとめました。
脚気からビタミンB1が注目
江戸時代から昭和の初期にかけて「全身の倦怠感」「食欲不振」「足のむくみやしびれ」がでる脚気(かっけ)で多くの死者が出たといわれています。
精米した白米を取る習慣が広まったことによるビタミンB1不足が脚気の原因だと20世紀初めの研究で判明しました。
それから「ビタミンB1」という栄養素が注目されるようになりました。
フルスルチアミンと天然ビタミンB1との違い
アリナミンFの有効成分は合成されたビタミンB1である「フルスルチアミン」です。
天然のビタミンB1は腸内に存在する「アノイリナーゼ」によって失活してしまいます。
そのため「アノイリナーゼ」によって失活しないビタミンB1誘導体がいくつか開発されました。
合成されたビタミンB1誘導体は「にんにく臭」がするのですが、武田薬品が開発したフルスルチアミンは「におい」が少ないのが特徴です。
作用
アリナミンFは下記の3つの作用があります。
- 神経機能障害改善作用
- 心筋代謝障害改善作用
- 腸管蠕動運動亢進作用(腸の運動を活発にする作用)
効能・効果
アリナミンF錠の効能・効果です。
下記の疾患のみ保険での処方が可能です。
○ビタミンB1欠乏症の予防及び治療
○ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、甲状腺 機能亢進症、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働等)
○ウェルニッケ脳症
○脚気衝心
○下記疾患のうちビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合
●神経痛
●筋肉痛、関節痛
●末梢神経炎、末梢神経麻痺
●心筋代謝障害
●便秘等の胃腸運動機能障害
●術後腸管麻痺
飲み方は食直後?
アリナミンFは「食直後」に服用することとされています。
「食後」は食事の30分後ですが、「食直後」は食事のすぐ後(5分後)です。
空腹時より食後に服用した方が効果が高くなること、悪心などの胃腸の副作用を防止する目的で「食直後」にされていると考えられます。
しかし実際の医療現場では飲み忘れ防止のために「食後」で処方されるケースが多くあります。
長期間処方できない?
「アリナミンFは長期で出せないから今回は無しにしときますね」
病院でこのように言われた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アリナミンFなどのビタミン剤については長期で処方すると保険が通らないことがあるためです。
医療費の7割〜9割は国から支払われているのですが、高齢化もあり保険財政がひっ迫しているため、本当に治療に必要な薬以外は審査が厳しくなっているのです。
そのためいつも貰っているからといって病院でお願いしても処方してくれないことがあります。
妊娠中・授乳中の服用
アリナミンFは妊娠中や授乳中などビタミンB1が必要な時の補給にも処方されます。
授乳中でも授乳を中止することなく服用が可能です。
ジェネリック医薬品はある?
アリナミンF錠には25mgのみ薬価の安いジェネリック医薬品が存在します。
ビタファントF錠25mg(東和薬品)
薬価の違いは1錠あたり0.4円程度ですので値段の差はほとんどありません。
市販薬はある?
アリナミンFの有効成分である「フルスルチアミン」が単独で入った市販薬は存在しません。
- アリナミンA
- アリナミンEX
- アリナミンEXプラス
などがフルスルチアミンの入った市販薬です。
1日あたりの「フルスルチアミン」が100mg配合されていますが、ビタミンB1以外のビタミン剤も含まれています。