うつ病に処方される薬がサインバルタカプセル(成分名:デュロキセチン塩酸塩)です。
サインバルタカプセルは脳内でセロトニンとノルアドレナリンが再取り込みされるのを防ぎ、セロトニンとノルアドレナリンの量を増やすことでうつ症状を改善します。
サインバルタはうつ病だけでなく、糖尿病性神経障害、線維筋痛症、慢性腰痛症にも効果があります。
薬局では
「サインバルタを飲むと太る?」
「飲み会があるけどお酒飲んでいい?」
「吐き気がひどいけどサインバルタの副作用?」
といった相談を受けることが多くあります。
患者さんから聞かれることを中心にサインバルタについてまとめてみました。
サインバルタ(デュロキセチン)作用機序・メカニズム
うつの状態では脳内の情報伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンの働きが低下していると考えられています。
うつ病の原因は様々な仮説がありますが、ノルアドレナリンやセロトニンが低下している説をモノアミン仮説といわれます。
サインバルタ(デュロキセチン)は脳内でのノルアドレナリンやセロトニン量を増やし神経伝達を増強させる働きがあります。
具体的は作用機序を解説していきます。
神経細胞(前シナプス)からノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質が放出され、次の神経細胞(後シナプス)に情報を伝えていきます。
神経細胞(前シナプス)から放出されたノルアドレナリンやセロトニンの一部はトランスポーターと呼ばれるトンネルのようなもので神経細胞(前シナプス)に回収されてしまいます。
サインバルタ(デュロキセチン)はノルアドレナリンとセロトニンが回収されるトランスポーターを阻害することで脳内のノルアドレナリン、セロトニン濃度を上昇させ、うつや不安、やる気の低下を改善させる働きがあります。
このようなメカニズムからサインバルタ(デュロキセチン)はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors)と呼ばれます。
サインバルタの飲み方(用法・用量)
うつ病の飲み方と線維筋痛症の飲み方は異なってきます。
うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛
成人は1日1回朝食後、デュロキセチンとして40mgを服用します。
1日20mgより開始し、1 週間以上の間隔を空けて20mgずつ増量していきます。
効果不十分な場合には1日最大60mgまで増量することができます。
線維筋痛症に伴う疼痛,慢性腰痛症に伴う疼痛
成人は1日1回朝食後、デュロキセチンとして60mgを服用します。
1日20mgより開始し、1 週間以上の間隔を空けて20mgずつ増量します。
サインバルタの副作用
うつ病治療での主な副作用は
悪心(36.6%)傾眠(31.0%)口渇(22.9%)頭痛(21.0%)便秘(13.9%)下痢(11.8%)めまい(10.9%)トリグリセリド上昇(7.6%)腹部痛(7.1%)ALT(GPT)上昇(6.9%)不眠 (6.8%)倦怠感(6.1%)AST(GOT)上昇(5.2%) 食欲減退(5.2%)
となっています。
特に悪心や吐き気、眠気や頭痛は非常に高い確率で現れます。
悪心や吐き気などの消化器系の副作用は継続で服用することで軽くなってくるといわれています。
副作用で太る?(体重増加)
「サインバルタを飲むと太る?」
よく患者さんから聞かれる質問なのですが、サインバルタは1~5%未満の確率で体重増加の副作用が現れることがあります。
しかし反対に体重の減少も同じくらいの確率で報告されており、サインバルタが原因となって太る確率は低いと考えられます。
副作用の頭痛が我慢できない場合
サインバルタでは高い確率で頭痛が起こることがあります。
我慢ができない場合は抗不安薬を追加したり、サインバルタからパキシルやジェイゾロフトなどのSSRIに変更されることがあります。
頭痛がひどい場合は我慢せず、主治医に相談をするようにしましょう。
お酒(アルコール)との飲みわせ
アルコールには中枢神経を抑制させる働きがあり、サインバルタと併用することで中枢神経抑制が増強することがあります。
またサインバルタもアルコールも肝臓に負担がかかることからも併用はオススメできません。
飲み会の時などお付き合いでお酒を飲む際にはふらつきの増強に注意しましょう。