乳癌患者さんの大半以上は、乳癌の増殖にエストロゲン(女性ホルモン)を必要とします。

エストロゲンが乳癌の増殖に関与しているタイプ(エストロゲン感受性乳癌)の場合、エストロゲンの働きを抑える薬が処方されることがあります。

ノルバデックス(一般名:タモキシフェンクエン酸塩)は抗エストロゲン薬に分類され、エストロゲンの働きを抑え、乳癌の増殖を抑えます。

閉経前閉経後のどちらにも適応があります。

ノルバデックス(タモキシフェン)について作用機序や服用時の注意点を解説していきます。

作用機序

ノルバデックス(タモキシフェン)は乳癌の増殖に必要なエストロゲンの働きを抑えます。

閉経前はエストロゲン(女性ホルモン)は主に卵巣から生成され、閉経後は主に副腎から生成されます。

エストロゲンが、がん細胞内にあるエストロゲン受容体に結合すると乳癌細胞が増殖します。

ノルバデックス(タモキシフェン)はエストロゲン受容体に結合することで、エストロゲンがエストロゲン受容体に結合するのを邪魔し、エストロゲンの働きを抑え乳癌細胞の増殖を抑えるのです。

抗がん剤の化学療法に比べて細胞毒作用による骨髄抑制や脱毛などの重篤な副作用が少ないが特徴です。

無月経・生理遅れの副作用

ノルバデックス(タモキシフェン)の主な副作用は無月経、生理が遅れるといった月経異常等の女性生殖器系が3.18%(120例/3762例中)と製薬メーカーの資料(インタビューフォーム)に記載があります。

出血の量に異常がある場合や、生理以外の時に出血がある場合は主治医に相談するようにしましょう。

ノルバデックス(タモキシフェン)乳腺ではエストロゲンの働きを抑えますが、子宮内膜ではエストロゲン様の作用を示すため、長期に服用する場合は年に1度は子宮がん検診が推奨されています。

副作用としての子宮内膜症や子宮がんの発生頻度は決して高くなく、乳癌再発抑制効果が副作用のリスクをはるかに上回ります。

ほてり・のぼせの副作用

ノルバデックス(タモキシフェン)はエストロゲン(女性ホルモン)の働きを抑える薬です。

エストロゲンの働きが減ると、体温調節がうまくできず、ほてりのぼせ発汗などの副作用が現れることがあります。

ほてりやのぼせの副作用は服用後、数ヶ月で軽減していきますが我慢できない場合は主治医に相談しましょう。

涼しい格好をし、扇子などを携帯すると良いでしょう。

代謝は肝臓

ノルバデックス(タモキシフェン)は肝臓のCYP3A4CYP2D6という代謝酵素によって活性体となり効果を発揮します。

少しマニアックな話になりますが、タモキシフェンはCYP3A4、CYP2D6によってエンドキシフェン、CYP2D6によって4-ヒドロキシタモキシフェンと2タイプの活性体となり効果を発揮します。

タモキシフェンの代謝経路

タモキシフェン
▼CYP3A4
N-デスメチルタモキシフェン
▼CYP2D6
エンドキシフェン

タモキシフェン
▼CYP2D6
4-ヒドロキシタモキシフェン

ホルモン療法によるホットフラッシュに使用されることのあるパキシル(一般名:パロキセチン塩酸塩水和物)はCYP2D6を阻害するため併用注意となっています。

パキシル(パロキセチン)がCYP2D6の働きを邪魔するために、タモキシフェンの代謝活性体の生成が低下し、抗がん作用が低下することが報告されているからです。

ノルバデックスのジェネリック医薬品

ノルバデックスには薬価の安いジェネリック医薬品が販売されています。

  • タモキシフェン錠「サワイ」
  • タモキシフェン錠「日医工」
  • タモキシフェン錠「明治」
  • タモキシフェン錠「MYL」

ジェネリックで調剤が可能な処方せんの場合、薬価の安い後発医薬品で調剤してもらうことができます。

先発品のノルバデックスは薬価が高いことからジェネリックを希望の場合は薬局の薬剤師に相談するとよいでしょう。