高齢者が筋力や活動が低下している状態(虚弱)をフレイル(Frailty)と日本老年学会が提唱しています。
高齢者が要介護状態になるまでの過程に、
意図しない衰弱
筋力の低下
活動性の低下
認知機能の低下
精神活動の低下
といった中間的な段階を経ることが多く、これらの状態のことを「フレイル」と呼ばれます。
このフレイルの状態は適切な介入によって再び健康な状態に戻せる可能性もあるため、フレイルの状態を早期に発見し、要介護状態に陥るのを防ぎ、結果的に医療・介護費を抑える狙いがあります。
フレイルの定義
フレイルの定義ですが、現在は下記のFried基準が採用されることが多くなっています。
5項目のうち3項目以上該当するとフレイルとなります。1〜2個該当する場合はプレフレイルといわれます。
1.体重減少、意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
2.疲れやすさの自覚 何をするのも面倒、何かをはじめることができないと週3〜4日以上感じる
3.活動量の低下 1週間の活動量が男性383kcal未満、女性270kcal未満
4.歩行速度の低下 標準より20%以上の低下
5.筋力低下 標準より20%以上の低下
サルコペニアとの違い
サルコペニアとは、1989年にIrwin Rosenberg氏によって提唱された概念で、加齢によって筋肉が減少する状態をいいます。
サルコペニアが進行すると転倒や活動量の低下を招き要介護状態につながる可能性が高いとされています。
サルコペニアは筋肉の低下だけが評価基準ですが、フレイルは栄養状態、疲労感、認知機能や精神的な活力の低下も基準に含まれているのが特徴です。
つまり、フレイルの中にサルコペニアが含まれると考えてよいでしょう。
フレイルの予防と対策
フレイルは筋力の低下だけでなく、栄養状態や活動性の低下など広範の要素が含まれるため、その人にあった予防方法を考える必要があります。
例えば朝食がパンだけの場合は、サラダや果物、たまご、ヨーグルトといった、たんぱく質・ビタミン・ミネラルを取り入れるのも効果的と考えられます。
またストレッチやウォーキングなど無理のない運動を促したり、家族や地域の方とのコミニケーションの場をなくさないようにしたり、感染症の予防のためにワクチンの摂取を徹底するなどの対策があります。
悪循環を断ち切る
配偶者が亡くなり食生活のバランスが低下したり、人と話す機会が減少すると、筋力・体力の低下、判断力・認知機能の低下を引き起こします。また筋肉・体力、認知機能が低下すると、今まで以上に外に出なくなる活動性低下といった負のスパイラルに陥ってしまい、結果的に要介護状態になってしまいます。
このような悪循環を断ち切るには周りの方のサポートが不可欠です。まずは家族から、そして地域の高齢者にフレイルに該当しそうな方がいれば、声をかけ生活に寄り添ってみてはいかがでしょうか。